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田原本校:中島 八木校:田川

読書のすすめ

小学生

「きみの町で」

 重松清 新潮文庫

「カズオは電車の中にいる。ロングシートの席に座って、さっきから胸をドキドキさせて。」皆さんは、目の前に二人のおばあさんが立っていたら、どうだろう。席をゆずるだろうか。勇気を出して、席をゆずっても、一人分だけである。ならば、いっそゆずらないほうが、不公平にならずに良いのではないか。おばあさんたちは、怒っているだろうか。いろいろ考えさせられる。タケシの前には、おじいさんが立っている。まるで席をゆずられるのを待っているかのように。タケシもちゃんと切符を買って乗っている。席に座る権利はあるはずだ。周囲の人がチラチラとタケシを見てくるようだ。別の誰かがゆずってあげればいいのにと思うタケシ。日常の中でこのような経験をしたことがあるはずだ。哲学的な内容であるが、様々なことを考えさせられる。短編集であるので、読みやすい。

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中学生

「願いながら、祈りながら」

 乾ルカ 徳間文庫

舞台は、北海道の過疎の村である。札幌から、村立生田羽中学校に社会科の教師として、林が赴任してきた。三浪の末採用試験に合格した青年教師である。しかし彼は、辞めるタイミングを見計らっていた。生田羽中学校は、統廃合の進む北海道にあって、奇跡的に残った分校である。しかし、来年度から本校に統合されることが決まっている。中学校には、林を含めて教師が三人、生徒は新一年生が四人と三年生が一人である。生徒たちは、自称霊感少女や嘘つき少年など、それぞれが様々な事情を抱えている。各章ごとに話者の視点が変わっている。一年間を通した成長物語である。

 

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(田原本校 中島)

高校生

『14歳からの哲学入門 今を生きるためのテキスト

 飲茶 著(単行本:二見書房 or 文庫:河出書房新社)

単行本の帯には「14歳の頃に訪れる『常識の崩壊』。それを乗り越えるとき、哲学が始まる―」。最初の頁には「哲学とは、『古い常識を疑って今までにないものの見方を発見し、新しい価値観、世界観を創造する学問』である」とある。ならばその14歳をすでに過ぎて頭が固くなり出したかもしれない時期(高校時代)にこそ触れておくべきかも知れない。著者の意図するところではないにしても、本書に登場する哲学者と思考過程、そのエピソードは見事に平易かつ興味深く書かれており、堅苦しいイメージの「哲学」が、実は14歳の子どものような発想から生まれてきたのだと実感できる。サルトル(「実存主義」)に影響を受けた若者たちの社会参加、そこからパリ五月革命に至る社会運動の広がりの軽快な記述はとても愉快だ。そんな「実存主義」もレヴィ=ストロースの「構造主義」の登場で時代遅れにされてしまい、ウィトゲンシュタインに至っては哲学を終わらせる哲学を生み出してしまった?など、これまで「食わず嫌い」だった「哲学」の門を叩くことになる可能性大である。「哲学」は評論の頻出テーマでもあり、その流れを大まかにでも掴むことは教養(背景知識)として武器になる。
 
  

『森林飽和 国土の変貌を考える』

 太田猛彦 著 (NHKブックス)                                                    

『東海道五十三次』には鬱蒼とした豊かな森は全く描かれていない。現在は「里山」がブームのような観があり、「かつての里山には持続可能で豊かな森が広がっていた。人々はその恵みを受けて暮らしていた」というイメージが一般的だが、ほんの五十年前までいわゆる「里山」ははげ山だらけだったり、木がまばらにしか生えていない状態だったという。古来日本人は建築用材や薪炭材として木材に依存するしかなかった。それが戦後林業の衰退とも絡み日本の森林は回復してきた。しかし木を伐採しなくなり放置された結果、海岸の浸食、そして花粉症にまで影響は広がっている。また里山の「奥山」化により人里にサルやクマが出没するようになったともいう。現在の日本の森林は飽和状態にある。本書は、現状を鑑み日本の自然環境と災害について発想の転換を迫る。2012年発刊以来版を重ねる良書だが未だ入試での出題は見当たらないので、そういう意味でもオススメである。
 
(八木校 田川)
 

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