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国語
橿原校:中島 八木校:田川
読書のすすめ
読書のすすめ
小学生
「あしたへの翼」おばあちゃんを介護したわたしの春
中島 信子 汐文社
小学六年生の理夢の視点で描かれた「ヤングケアラー」の心を描いた作品である。四人家族の佐高理夢の家に、父方のおばあちゃんがやってきた。住んでいたアパートが火事になったからだ。穏やかな生活が崩れ始めた。おばあちゃんには認知症があり、理夢の母親と仲が悪くなってしまった。結果、母親は家出をし、姉も後を追うように出て行った。新型コロナウイルスの影響で、学校が休校になってしまった。勉強をすることもできなければ、友だちにも会えない。家から出られない。父親は、トラックの長距離ドライバーで家を留守にしがちである。認知症のおばあちゃんは、とうとう寝たきりになってしまった。おばあちゃんの世話は、理夢がたったひとりでしているのだ。
中学生
「ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー」
ブレディみかこ 新潮文庫
著者は、イギリスの南端にあるブライトンに配偶者と息子と暮らしている。配偶者は、銀行をリストラされて、大型ダンプのドライバーになったアイルランド人。著者は、単身渡英して、結婚し、息子を出産した。出産前は、子ども嫌いだったが、子どもの面白さに目覚め、イギリスで保育士になった。すくすくと育った息子は、カトリックの名門小学校に通い、生徒会長まで務めた。イギリスには、国の機関やメディアの情報などを基にランキングがある。ある日、この頃は底辺校からランキング中位に急上昇している中学校から、見学会の招待状が届き、著者と息子は参加した。著者は気に入ったのだが、配偶者は一貫して反対している。理由は、九割が白人のイギリス人で、東洋人の顔をした息子がいじめられるのを心配したからだった。多様性や、人種問題、貧困問題等も考えさせられる母親目線のエッセーである。
高校生
「メイド・イン京都」
藤岡 陽子 朝日新聞出版
十川美咲32才は、4才年下の銀行員古池和範と交際しはや一年。突然亡くなった父親の葬儀のため1週間ほど実家の京都に帰っていた和範が、戻って来るなり美咲にプロポーズした。実家を継ぐので結婚してくれという。和範の実家は京都で飲食店や土産物屋、老舗旅館の経営と手広くやっているらしい。婚約し周りの女友達からは「玉の輿だ」と祝われての京都移住。だがそこには京都人達からの洗礼を浴びる日々が待っていた。文化や風習、価値観の違いの中で葛藤し、次第に和範との関係にも変化が現れるが、その先に美咲の新しい生き方はあるのか。第9回京都本大賞受賞(過去1年間に発刊の京都府を舞台にした小説の中から最も地元の人に読んで欲しい作品を決める賞)のこの作品はいわゆる京都人との異文化コミュニケーション(?)のお話で、個人的にはもっといろいろ小ネタをぶちこんでほしかったが、楽しく一気に読み終えた。
志望校が他府県の場合、その土地のことを知ってより憧れが増すということもある。学習意欲を上げるためのこのようなアプローチもありだろう。実際奈良を出て他の土地で一人暮らしを始める人もいる。京都に限らず他所の土地を舞台にした物語に触れてみるいい機会かもしれない。ひょっとしたらあなたも近い将来鴨川の川岸で等間隔に座っているかも。
「コンテナ物語 」世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版
マルク・レビンソン (著)、 村井 章子 (翻訳) 日経BP
原則他人の勧めるものには手を出さない。だがビル・ゲイツが「2013年に読んだ記憶に残る7冊の本」の1つに取り上げ、ひろゆきが「人生を変えた本・ベスト3」の2位に挙げ、岡田斗司夫が2020年に読んだ本のうち一番面白かったと絶賛する。本当に面白いのか?という興味には勝てず昨年「増補改訂版(2019)」を読んでみた。日経BPの分厚い本だが、前半は一気に読んだ。読み切るには時間はかかったが、結論は断然お勧めである。
コンテナという「箱」の発明が世界を変えたという。海運において驚くべき輸送コストの削減が可能になった結果、これまでコスト高だった海外の品物が国内のものと同じ感覚で手に入るようになった。完成品だけでなく原料や部品も同様である。そうして世界の流通経済システムは様変わりした。周りはその恩恵を被ったモノやサービスで溢れている。
何か1つのイノベーションで世界ががらりと変わることがある。いつの間にかそれがフツーになり実感はないが、振り返るとほんの数年前とは明らかに様変わりしている。これから社会に飛び出すみなさんに何かヒントになればという思いでこの本を選んでみた。